市立荒海(あるみ)中学校。通称、アル中。
僕たちはこのふざけた名前の中学校で、ふざけた日々を送っている。
11月24日(金) 日直:榛名
クリスマスまであと1ヶ月。
クラスじゅうが、なんだかそわそわと落ち着きません。盛りのついた獣のようです。
そのせいで、今日、久住くんが、岡嶋さんに殴られていました。
どうやらラブホテルのサービスチケットをちらつかせてデートに誘ったようです。
頭が悪いとしか言いようがありません。
岡嶋さんはものすごく怒っていて、セクハラで訴えると言っています。
でも、岡嶋さんの過剰防衛によって久住くんの差し歯がとれたので、もしそんなことしたら久住くんの両親が、岡嶋さんを訴えるかもしれません。
わたしはそれが心配です。
(ちなみに、なぜ久住くんが差し歯なのかといえば、1年のとき、岡嶋さんが蹴ったサッカーボールが顔面にぶち当たったからです。
もちろんそのときはわざとじゃなくて、「ボール取ってー」と頼まれた岡嶋さんが思い切り蹴ったら、あらぬ方向に行ってしまっただけで、岡嶋さんは血だらけの久住くんにものすごい勢いで謝ったそうです。
久住くんはその必死に謝る姿に優しさを感じ、同時に、さっきのボールの威力の強烈さから強さも感じ、「優しくて強いナウシカのような少女」が理想だった久住くんは、一瞬で恋におちたのだそうです。)
クラス内で裁判沙汰はイヤだなぁ。
先生、どうにかしてください。
(どうにか、て言われても…)
相変わらず、このクラスの生徒はまともな日誌を書いてくれない。
日々あったことを丁寧に記してくれる、それは嬉しいのだが、いかんせん、内容が。
まあ個性的な面々の集うクラスだから、それも致し方ないのかもしれないが、クラス委員の榛名が書いた日誌ですらこの有様だ。
いつも沈着冷静な榛名が、しれっと涼しげな顔で、こんな馬鹿馬鹿しいことを書いているのかと思うと(だいたい「盛りのついた獣のようです」なんて表現、中2女子が使うだろうか)、なんていうか、泣きたくなってくる。
「Hi!そこのプリチーガール!!俺とクリスマスデートしないかーい…て、待って岡嶋さん!それは無理、それはいくらなんでも無理、机は、机だけはやめてぇぇ!!」
そんな僕の気分に追い討ちをかけるように、廊下のほうから聞こえてきた大声、そして破壊音。
職員室のドアがばぁん!と開いて、生徒たちが叫ぶ。
「市原先生!C組の久住と岡嶋が!!」
「久住が机の下敷きにぃ!」
『久住くんは差し歯が取れたことなんて気にしてないと思います。だから大丈夫でしょう』
やっとの思いで、それだけ書いて、僕は生徒たちに引きずられ、現場に急行した。
こういう馬鹿っぽいのが書いてていちばん楽しいんです。(開き直り)
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